衣食足りて“消費は美徳”と気付く共産主義社会?
中国(本土)の観光産業の成長率が著しいのは,経済全体の成長率から勘案しても当然と言えるであろう.
まず可処分所得の増えた労働者に“余暇”へ投資する余裕が生まれている点が大きな要因であるが,その背景には国が関連消費を後押しする政策を採っている点も見逃せない.
中国の三大祝日としては春節(旧正月),労働節(メーデー),国慶節(建国記念日)が挙げられる(と言うよりはこれ以外に全国民を対象とした祝日が非常に少ない)が,従来はその日のみ祝日として扱われていたものが(これに続く数日間を日曜を振り替えるなどしてして)連続休暇にする傾向が見られるようになった.
公的機関が率先して休業する事で国民的合意が形成され,経済の発展によってゆとりが顧みられるようにもなり,それによって新たな産業が発展するという“成長スパイラル”が形成されつつある.
(一説には消費の促進と共にエネルギー需給の問題があるとも言われているが,工場で消費するエネルギーが不足がちな中国ではあながち穿った見方とも言えないのかも知れない.)
まだ富の分配に偏りが見られ所得格差が開いている段階ではあるが,これが将来底辺にまで余暇投資が行き届くようになった場合には,その人口規模から見ても巨大な産業セクターが出現する事は明らかであろう.
観光関連の消費は国内だけに留まらず,かつての日本人がそうであったように観光客は大挙して海外の有名地へ繰り出し,これらの土地の宿泊,物販,飲食の分野でも経済効果(と共に摩擦も)が顕在化すると予想される.
“衣食足りて礼節を知る”という言葉が示すように,マナーやモラルというものは生活に窮していない者が備える社会規範である.
かつて多くの日本人海外旅行者が旅先での行動に顰蹙を買ったように,今後多くの中国人旅行者も同じ道を歩むものと考えられ,世界の習慣を体験してようやく世界に於ける中国のスタンダードについての自覚が生まれるのだと期待したい.
北京オリンピックを控え共産党政府は国民のマナー向上に躍起になっているらしいが,罰金というムチだけで従来行われていた慣習が改まるとは考えにくい.
自身の言動が他に照らして“恥ずかしい”という自覚が備わってこそ身に付くのがマナーであり,自身の尊厳にかけて守るのがモラルであろうが,これらが確立されていない社会ではそれを構成する人々の“衣食”が足りていないとも言えよう.
ここ最近は日本の社会でもモラルの崩壊が言われているが,これは所得の伸び悩みによって“衣食”が足りていない人が増えているためであろうか,それとも“恥ずかしい”という認識自体が消えてしまっているのだろうか?
もし仮にこの先時を経て中国人のマナーが向上し日本人のモラルが崩壊するようであれば,市場規模による経済繁栄度の違いによって両国間の“衣食の充足率”が逆転しているのかも知れない.
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