2007年09月12日

異国に消えた人々


“企業戦士”を奪った報復に“兵士”が送り込まれている 

9.11同時多発テロで犠牲となった日本人*は外務省の発表では24人.

その多くがWTCに入居していた企業の従業員で,金融関連企業が多く入居するビルの性格上日本国内の銀行,証券などからの赴任や現地採用によって勤務する人々が殆どであった.

銀行では富士,第一勧業,日本興業(以上現みずほフィナンシャルG),あさひ(現りそな),中央三井信託,横浜,静岡,山陰合同,中国,西日本(現西日本シティ)の各銀行,証券では日興,岡三が,そしてその他複数の日系金融関連企業**が入居しており,また複数の外資系企業にも日本人従業員が勤務していた.

突入とそれに続く崩落の犠牲となった日本人はこれら企業(入居フロアにより被害には大きな差がある)に勤務する22人で,このようなケースでは救出・捜索活動が進展しないとその生存の確認が出来ず,またこの事件ではその規模から未だに厳密には確認が出来ていない人が多数いる点においてより悲劇的である.

事件直後から安否を確認するために多くのメッセージが付近に張り出され,時間の経過と共にそれは失われた(と判断された)者へ届けたいと願う遺された者の思いへと変っていった.

失われた家族や友人を思い,これらを奪った者への憎しみの感情を抱く事には何の疑問もない. 避難する人々の救出に向かい犠牲になった消防士や警察官,そして瓦礫から一人でも救出しようと努力した人々の思いは世界中誰にでも共通する“助け合い”の意思であろう.

事件後報復として展開された一連の軍事行動はそれなりの成果を上げたのかも知れないが,同時により多くの新たな犠牲とそれをもたらした相手への憎悪も生み出している. イラクでも爆撃によって崩壊した瓦礫に埋もれた人々がおり,それを助け出そうと力を合わせた人々がいる.

元を辿ればアメリカ合衆国という国家に対して向けられた憎悪が,同時多発テロという姿で具現化されたと考えるのが自然であろう.

無差別テロを防止するためにはそのような憎悪が蓄積される過程を分析し,理由(勿論“国益”の名の下に進められる政策にも多くの理由があるが)を探る事がより重要なのではないだろうか. これまで国益や“秩序維持”の名の下に進出した国々でどのような行動を取ったか,そしてどのような結果をもたらしたのかを顧みる事で次に取るべき行動が見えてくる筈である.

米軍では海外に駐留する兵士に対して“現地の文化や風習を尊重し共存関係を築く”事を教育しているが,これはまさに国家自身が相手国に対して取るべき態度であろう.

テロもそれに対する報復もその根本には“愛する者を奪った相手への憎悪”が存在し(それに付随して経済的な利害も絡むが),その連鎖を解くためのプロセスが介在しない限りこの憎悪スパイラルが人命を奪い続ける.(果たして9.11テロ犠牲者遺族の内どれ位の人々が報復攻撃を望み,どれだけの人々が現在も変らず支持し続けているのかも気になる.)

“自由”,“平等”,“友愛”は自らの独立の際に手本としたフランス革命の思想ではなかっただろうか.


* 事件を身近に感じられるよう日本人犠牲者を挙げるが特に国籍を限定するものではない.
**  同様に身近に感じ易いよう具体的な日系企業名を挙げたが他意はない.
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