2007年09月07日

ダヴィンチの夢

ヘリコプターは回転する物体が安定するというバランスの産物 

回転翼で空を飛ぶこの装置が発明されて100年を迎えるという.

ライト兄弟が動力を持つ固定翼機での飛行に成功したのが1903年であり,その僅か4年後には回転翼で浮上するという技術が実現していると考えると驚きを感じる.

固定翼機が前方への推力により翼面に揚力を得て浮上するのに対し,回転翼機はその名の通り翼自体が回転する事で揚力を発生させ浮上する. 前者がどちらかと言えば受動的な浮上方法であるのに対し,後者は極めて能動的な浮上方法と言えるのではないだろうか.(それ故に“力”を要するため騒音や燃費の面で固定翼機に劣る)

この飛行方法が実用レベルの技術として確立されるには発明から更に30年ほど待たなければならないが,この間様々な研究により安定した飛行を実現するための努力が重ねられた.

回転翼機最大の問題は翼(ローター)を回転させるために垂直方向に動力の回転軸を必要とする点であり,ローターの回転によって揚力が発生し機体が浮上すると同時に,地面からの支えを失った機体自身がローターの反作用で逆回転を起こしてしまう.

巨大な翼(メインローター)を頭上に載せ回転させながら機首を一定方向に安定させるために様々な方策が試みられたが,その中で現在最も普及している手法が機体後部にローターの回転軸及び進行方向に直交する向きで補助回転翼(テールローター)を設置し,反作用による機首の回頭を打ち消すというものだ.(この他にも2セットのメインローターを同軸上で反対方向に回転させ反作用自体を相殺させる手法や,メインローター2基を機体の前後に設置してそれぞれを反対方向に回転させる事で,機首が回頭しようとする方向の均衡を取る手法が実用化されている.)

かのレオナルドダヴィンチも創作活動の中でヘリコプターの構想を練ったとされ,遺されたスケッチからそのアイディアを窺い知る事が出来るが,天を向いたドリル状の回転翼は残念ながら理論的な設計とは言えず,想像の産物と呼ぶにふさわしくある意味メルヘンチックでさえある.

その夢ある姿はかつて全日空機の垂直尾翼に標され大空を羽ばたいていた. ルネサンス期の天才によって生み出されたこの夢が,500年の時を超えシンボルマークにその姿を変えて現代の空を飛翔するという発想は,世界へ羽ばたく航空会社として誇るべきものであったと思うが,残念ながら同社が国際線に進出したその後現在の“ANA”ロゴに改められてしまった.

ダヴィンチが思い描いた夢が実用化されるまでには大幅な姿の変更を要したが,空中で静止するホバリングという特徴を活かして人命救助や狭小地への物資の搬送などに不可欠な機材となっている.

惜しむらくはこの技術が戦争の道具としても活用されている事であり,この点においては天才も自らのアイディアとは異なる姿をしている事に胸を撫で下ろしているかも知れない.
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