アフガニスタンでの対イスラム系過激派ゲリラ掃討作戦でネックとなっているのが,隣国であるこのパキスタンの存在である.
ゲリラは国境を挟んでパキスタン側からアフガンへ越境して悪さをし,事を済ませると再びパキスタンへ戻って行く. 当然ながらアフガン国軍兵力は国境を越えて追撃出来ないため,事実上パキスタンはゲリラにとっての安全地帯として機能している.
ではパキスタン政府はこれを手をこまねいて容認しているのかと言えば,複雑な事情から直接関与出来ないというのが正直なところであろう. 伝えられる懸念も他国が自国領土へ空爆を行う事に対する主権国家としてのメンツも然る事ながら,これが実行された場合に統治者として事態の収集が付けられなくなる恐れがあるためと考えられる.
勿論東アジアでのイスラム過激派の存在はアメリカ合衆国にとっての関心事でもあり,その関心を引き付ける限りは政治的駆引きによって自国に有利な援助が期待出来る.
そういう観点からすれば“ある日突然全ての問題が解決している”状況は好ましいものではなく,必要悪としてのゲリラの存在にも意味があり,根絶するような厳しい追討は行わないという穿った見方も出来る.
しかしより現実的にはこの一帯が“自由に関与出来る地域でない”ため,徹底した掃討が出来ないとする見方が一般的であろう.
多くのイスラム国がそうであるように,パキスタンでも政治制度として人為的に形作られた国家の権力よりも,何代にも亘って生活の中に根付いている部族制度とその長老の権力が実効力を持っており,中央政府であっても有力部族やそのリーダーの勢力範囲には迂闊に介入出来ないと言われている.
部族を率いるリーダとしてはそのメンバーの生活とイスラムの教義に高い優先順位があり,国際社会における対テロ封じ込め活動にはさほど高い関心は持っていないであろう.
国内にそのような“アンタッチャブル”な地域があり,そこから周辺国へテロを輸出している国が果たして国際社会から“国家”として信任されるに足るのかという疑問がある.
ましてや過去に国境を巡って隣国インドと激しく対立してきた経緯から,インドの核兵器保有に対抗してこの国もあの悪名いカーン博士の力で核保有国となっている.
部族制度という曖昧かつコントロール出来ない勢力を内包する国家が核兵器保有国であるこの現実は,まともな考えの持ち主であれば信じられない脅威であると認識出来る筈だ.
一度核に手を染めた国を非核化する事の手間と代償は,将軍様率いる絶対君主制共和国の例で我々は学習済みである. 現在の脆弱かつ危ういパキスタン情勢に対しても,本来であれば西側各国が協力して絶妙の匙加減で政治的健康回復の薬を呑ませなければならないのだが,アメリカ一国に依存して関心度が低い現状も脅威と言えば言えなくもない.
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