大深度温泉については見直すべき時に来ているのではないだろうか?
そもそも我々が通常“温泉”と呼ぶものは,地下源泉が地表もしくは地中の浅い部分まで到達しており,簡単な掘削で湧出するものを指していた.
しかし昨今話題の都市型“天然”温泉はと言えば,千数百メートルという近代技術を駆使して到達する深度から汲み上げた井戸水で,火山国日本ならばこれだけ掘ればどこでも熱せられた地下水が出ようとも言える.
地表付近で湧出する温泉でも当然ながらガス成分が噴出する場合はあり,それによる被害防止のため高濃度地帯では立入禁止区域が設定されているが,これは永く習慣的に知られた現象であって犠牲者が出るような事故は稀である.
ところが街のど真ん中で大深度から汲み上げる温水の場合は,到達した深度までの間にどのような地下層が存在して,何がそこに封じ込められているかという事にはあまり関心が払われておらず,周囲の人もまさかそこから天然ガスが湧き出ているとまでは想像していない.
当然ながら掘削時には天然ガス類の存在は想定されており,今回事故を起こした施設にもあるような除去装置の設置などは行われているが,埋蔵量や地盤などの影響による突発的な噴出などまで想定した詳細な調査はしていないと言われており,そういう意味では従来の対策のままであれば今回同様の事故は今後も起こりうると言えよう.
永く自然に(もしくはそれに近い状態で)湧き出ている従来型の温泉と,温泉地帯でないにも拘らず大深度から無理矢理引っ張り出す温水とでは,そもそもの経緯や取水によって起こりうる影響に大きな違いがあると考えられ,大深度からの揚水が地下水系や地盤に及ぼす影響については今後更に研究を重ねるべきであろうし,その結果が明らかになるまではこのような施設の建設も凍結するべきではないだろうか.
東京では地盤沈下防止のために工業用水としての地下水利用が規制されているが,温泉目的の利用である場合には地盤沈下規制の直接的な規定がなく,揚水量の報告も義務付けられていないのが実態だ.
今回事故を起こした施設の親会社はオフィス内でのコーヒーサービスで知られているが,業種の拡大を推し進め傘下に多数の関連会社を抱える一大グループを構築しており,その中には環境破壊が懸念される(=反対運動が起きている)リゾート開発を推進するる企業も含まれている.
環境と言う概念は自然が多く残る南の島や森林地帯だけにとどまらず,我々が日々活動する都市部においても当然顧みられるべきものであり,いくら利潤の追求が企業活動の目的であるとは言ってもそこに生活する人々の生活環境を損なう権利はない.
そう考えると都内で複数の都市型温泉施設を経営してきたこの企業の姿勢や,その社会に対する倫理観のようなものが垣間見えて来るような気がするのは考え過ぎだろうか.
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