ビクターという企業を語る際に,接頭語として“名門”の文字を目にした経験の持ち主は少なくないのではないだろうか.
今では余り目にする機会が多くないが,犬(フォックステリア)が蓄音機のラッパ部分に耳を傾けるマークは,大元である米ビクタートーキングマシン(後のRCAビクター)以来受け継がれてきた伝統を持ち,“グラモフォフォン”と呼ばれる現在で言うアナログレコードディスクを発明した人物にそのルーツを持つ,正に名門と呼ぶにふさわしい血統だ.
それ故に日本国内よりも海外で“JVC”のブランドで存在が知られており,親会社であったRCAが買収されて以降ビクターブランドを継承しなかったために,正当にブランドを継承する唯一の企業として現存する.
かつて日本国内でTV受像機の生産が始まる前,“テレビの父”と呼ばれた高柳健次郎氏が陣頭に立ちブラウン管TVを日本で始めて生産した企業の一社(他に東京芝浦電気=現東芝,早川電機工業=現シャープなど)でもあり,松下幸之助氏はその技術力を高く評価し,戦後の再建期には自らビクターの会長に就任したほどであった.
後にはVHS規格の生みの親として,そして最近では液晶TVの高速表示(早い動きの画面を滑らかに映す)の開発でもその技術力は健在を誇るが,ワールドカップサッカーのオフィシャルスポンサーであった事が余り記憶にない人が多い点も含め,その営業・マーケティング力の乏しさが悔やまれるところでもある.
ロゴマークに亡き主人の声が録音されたディスクを再生する蓄音機に耳を傾けるテリア犬を採用したエピソードは有名だが,今この企業は現在の主人である松下電器の意向に耳を澄ます以外に道はないと言えよう
合併相手として話題のケンウッドも,かつてオーディオ技術の黎明期に“トリオ”のブランドで高級機の地位を確立した,無線技術に優れたこちらも歴史ある企業であるが,現在の社名で馴染みの製品はカーナビや電話機程度になってしまった.
共に伝統や技術では申し分のないバックグラウンドを持ち,製品に重複部分が少ないこの二社の合併話が遡上に上がるのは自然な流れと言えよう.
元来は投資ファンドへの売却交渉が進められていたが,株価の算定で両者の期待の隔たりが埋め難く(それだけビクターの財務内容が厳しいという事か),新たな交渉相手としてケンウッドが浮上した.
個人的にはここにパイオニアに合流してもらい,プラズマ&液晶ディスプレイとカーエレクトロニクスのフロントランナーとして復活を遂げて欲しいと考える.
世界の電気製品の歴史に名を残す名門ブランドが傷んでしまう前に最適のパートナーを見つけ,蓄音機に聴き入る犬のように消費者のニーズを汲み上げ,伝統の名前を後世に伝えていって欲しいものだ.
【日記の最新記事】

